食道がん、早期発見
世界的な指揮者として活躍する小澤征爾氏(74歳)が毎年定期的に受診している健康診断で、早期の食道がんが発見されたため、6か月の休演を宣言した。
食道がんが見つかったのは、昨年末に聖路加国際病院で受診した健康診断の胃部内視鏡検査だ。ごく早期であったため、もちろん自覚症状もなく、まさにたまたま発見できたケースだと言えるが、氏が内視鏡検査を受診していなかったら、半年、いや1年以上たってから、おそらく食事がのどに引っかかるような違和感を感じるようになってから見つかったはずだ。こうなると手術も大がかりになるだろうし、たとえ治癒してもその後の生活の質(QOL)は著しく低くなることだろう。もちろん完治できる可能性も低くなり、転移や再発の危険性がかなり高くなってしまう。
早期であれば内視鏡的に手術できるので、経過は良好であるが、食べたものが喉につかえたりするようになるとかなり進行している可能性が高く、予後も悪くなる。わずかな違和感を感じた程度でも、早く医師に相談して検査することを強く勧めたい。
健康診断ではすでにおなじみの胃部内視鏡検査であるが、食道の検査にもなっていることは意外に知られていないようだ。カメラを入れるときに「オエッ」となるその時から、すでに観察は始まっているのだ。少なくとも食道はすべて検査されている。海外での健康診断では、内視鏡検査に際しては「鎮静剤」を使うので、「オエッ」もなく、大変楽に受診できることがほとんどだ
食道がんは胃がんの十分の一の患者数であり決して多いがんではなく、日本では年間の患者数が一万人に満たない。喫煙と飲酒が大きな原因になるが、熱い食べ物を好む人にも多いといわれている。また胃酸が逆流しやすい人にもリスクが高い。胃の入り口に当たる噴門部が横隔膜の上に出てしまう食道横隔膜裂孔ヘルニアの患者は、胃酸が逆流して食道粘膜に常にダメージを与えるためがんのリスクが高くなる。胃と違って食道は胃酸に対して無防備だからだ。胃部内視鏡検査で逆流性食道炎を指摘されるケースは多く、程度問題ではあるのだが食道横隔膜裂孔ヘルニアでは食道炎を起こしやすく、この場合食道がんのリスク高いといえる。
食道がんの早期発見は内視鏡検査しかない。残念ながら日本人の多くが受診していいるバリウム検査は、早期癌の発見はほとんど無力だ。少なくとも、年に一度の健康診断では、胃部内視鏡検査を受診しておくことを勧めたい。特に胸やけしやすい人や飲酒喫煙が多い人など、必要度が高い検査だと言える。