ダイエット考(2)
ダイエットについて考えるシリーズの第二弾。今回は遺伝子に関してです。ヒトの遺伝子に「節約遺伝子」というものがあります。これは、エネルギー摂取ができない時に働く遺伝子で、体温を下げたり、心拍数を抑えたりするなど、日頃の基礎代謝を落として内在するエネルギーをより長く利用できるようにするシステムに関わっているものであり、動物の世界ではごく当たり前に働いている遺伝子です。野生動物はいつでも餌にありつけるわけではなく、いくら歩きまわってもなかなか餌にあたらず、空腹状態を維持せざるを得ない事態に陥ることなど珍しくはありません。そこでエネルギー摂取がなくても少しでも長く生きながらえるように働く遺伝子が節約遺伝子というものです。
さて、ヒトの体内でのこの遺伝子ですが、一日3食が当たり前となった現代の食生活では空腹でいなければいけない時間が極端に少ないため、働く必要性がありません。この遺伝子自体は存在するものの、いつも寝ている状態にあるわけです。そんな我々の身体が飢餓を意識するのは、減量しようとして摂取エネルギーを大きく落とした時です。太ってきたと意識するときは必要とされるエネルギーより多くとってしまっている状態であり、減量に向けるには多くとってしまっているエネルギー量よりもさらに多いエネルギーを減らさなければいけません。そのギャップは思いのほか大きく、当然ながら長い時間空腹でいなければいけない場合も少なくはありません。食事量を大幅に減らすために常に空腹を感じるようにもなります。この時にそれまで寝ていた節約遺伝子が起き上がり、エネルギー消費を抑える方向に働くわけです。つまり生存の危機を察知してこの遺伝子が働き消費エネルギーを抑えてしまうため、より痩せにくい状態になります。ダイエットに挑んで、最初は簡単に体重が落ちるのにすぐに壁にぶち当たる理由の一つがこれです。ダイエット後は節約遺伝子が働いている状態となり、エネルギー消費を抑える一方で、入ってくるエネルギーを効率的に取り込もうとするので、より太りやすい体質になるともいえます。目標体重に達したからといって、安心して元の食事に戻ってしまうと以前よりもさらに太ってしまうというリバウンドを起こす大きな原因です。ダイエットに失敗してさらに太ることを繰り返してしまうのは、節約遺伝子が働いているからです。
ヒトとチンパンジーの遺伝子はたった1.8%しかないと言われています。ほとんどの遺伝子が一致してしまうということは、生物として備わっている遺伝子はほぼ共通しているということです。人はヒトである前に動物であることを意識したほうが良さそうです。毎日規則正しく3回の食事が当たり前の我々の生活が、野生動物の生活といかにかけ離れているのかを理解しなければいけません。餌を探し求めて歩きまわる動物との運動量の差も考えると、ヒトの摂取カロリーが如何に大きいのか具体的に理解できるものと思います。
したがって減量しようと一旦決意したからには、一生の課題であると自覚して、減量に成功しても油断せずにエネルギーの摂取を調整しなければいけません。食べてはいけない物があるとは言いませんが、摂取カロリーが多すぎたと思った時は、常にその後は調整するようにしなければいけません。