ピロリ除菌で胃がん予防
ピロリ菌は強い酸性下でも棲息できる唯一の微生物だ。最近では内視鏡検査や呼気法検査で感染の有無を簡単に調べることができるので、一般にその存在が広く知られるようになってきた。
このピロリ菌が胃がんの原因になるということを証明する研究結果が、日本人研究者によって英国の医学誌「ランセット」に報告された。
研究は全国51の医療機関で、505人の早期胃がんの患者の協力の下に実施された。がんを内視鏡で治療したのちにくじ引きで除菌するかしないかの2つのグループに分けて3年間追跡。それぞれのグループで2次胃がんができる人数を調べた。その結果、除菌したグループで9人、除菌しなかったグループで24人に2次がんを認めたが、統計的に処理すると胃がんのリスクは除菌しない場合を1とすると、除菌した場合は0.34となり、明らかに除菌の効果が認められた。明確な結果であり、研究に協力したが最初に除菌しなかったグループの患者も後に除菌している。
これまで、除菌で「前がん状態」が改善したといった研究結果は報告されていたので、ピロリ菌が胃がんのリスクになっているということは定説となっていた。WHO(世界保健機関)でもすでにピロリ菌を発がん性物質等のリストに登録している。今回の研究で採用されたくじ引きで除菌するか否かを決めるという「無作為化比較研究」において、ピロリ菌除菌の胃がん予防効果を証明したのは世界初だ。
胃がんの原因の8割以上はピロリ菌感染が原因であるという。日本人の胃がん罹患数は、すべてのがんの中でも最も多い。この原因の多くがピロリ菌であるならば、ピロリ菌を積極的に除菌すれば、胃がんのリスクは相当減ることが期待できる。
ピロリ菌の感染がわかって薬を受け取っているにもかかわらず薬の服用をためらっている人が少なくないようだ。服用中は飲酒をできる限り避けなければいけないが、飲酒の機会が多いという理由を上げて、結局除菌の機会を逃してしまっている。
除菌薬の服用はほんの1週間ほど。腹部の不快感など副作用もないわけではないが、これで胃がんが予防できるのであれば負担は軽い。ピロリ菌に感染していることが判ったら、ぜひ積極的に除菌するべきだろう。