チクングニア熱(シンガポール)

米国CDC(疾病予防センター)が2月13日に発表した感染症流行情報によると、2月5日時点で、シンガポール保健省が同国内の限られた地区からチクングニア熱の可能性がある患者13名の発生を報告しているという。患者はいずれも海外渡航歴がなく、しかも狭い地域で集団的に発生していることからシンガポール国内で感染したものと考えられる。

チクングニア熱は、ウイルスを持ったネッタイシマカやヒトスジシマカ(ヤブ蚊)に刺されることで感染する。急激な発熱と全身の関節の激しい痛みを特徴とするほか、患者の多くに特有の発疹を認める。症状が緩和した後も、関節痛だけは数ヶ月にわたって続くこともある。ちなみにチクングニアとはタンザニアのマコンデ族の言葉で「前かがみになって歩く」という意味で、患者が関節の痛みに耐えながら歩く姿を意味してるそうだ。

この病気で死亡することは稀で、感染者の多くは症状が出ない「不顕性感染」であるが、インド洋の島国・レユニオンでは2006年に総人口の3割にあたる約26万人が感染・発症し、200人以上が死亡しており、軽く見ることはできない。

チクングニア熱は1952年にアフリカで発見された感染症で、元はサルが持っていたウイルスだといわれている。これまでサハラ砂漠以南のアフリカからインド洋、東南アジアにかけて流行したり、散発的な患者が発生しているが、香港や日本では輸入例(海外で感染して帰国して発症した患者)が数件認められているだけである。

チクングニア熱を媒介する蚊は、香港や日本でも広く生息しているため今後チクングニア熱患者が発生することはないという保障はなく、他のマラリアやデング熱といった熱帯病と同様に、地球温暖化に関係してその流行地域が拡大する危険性は十分考えられる。

CDCではシンガポール保健省の発表を得て、シンガポールへの渡航者に対して感染予防を勧告している。現在のところ治療薬やワクチンはなく、感染発症しても対症療法しかない。唯一の予防法は蚊に刺されないこと。
特に夜間の外出や昼間でも薄暗いところ(ブッシュ)などに入るときは、肌の露出をできる限り少なくすることや忌避剤(虫除け)を使用することを勧めている。チクングニア熱予防は、マラリアやデング熱など蚊が媒介する病気の予防に共通しているので、シンガポールに限らず、特に熱帯圏への渡航に際しては十分心得ておく必要があるだろう。