H5N1ウイルス-中国シンセンで人への感染を確認

中国当局からの報告によると、広東省シンセンで31歳の男性が鳥インフルエンザ(H5N1)ウイルスに感染したとのことだ。中国国営新華社は、この男性は6月3日に発熱し、背部痛や咳といった症状を呈し、その翌日に入院していることを伝えている。
現在、この男性は重体に陥っており、周辺の施設での3度の検査の結果ではいずれもH5N1ウイルスが確認されており、さらに検体は北京の研究所に運ばれ最終的な確定診断作業が行われた。
WHO(世界保健機関)でも、この事例はH5N1鳥インフルエンザウイルスの人への感染として確認した。今回の事例は、中国において、H5N1ウイルスが人に感染した19例目とされる。

H5N1感染が疑われている患者は、妻が市場で購入してきた鶏を調理して食べているが、直接鶏に触れてはいないという。今のところ妻や家族、あるいは患者との接触が考えられる約100名にはこれといった症状は出ていないが、家族等は当局の監視下に置かれ、現在も経過を観察されている。

今回のケースでは、患者は事前に直接鶏には触れていないとのことで、専門家は彼の感染リスクは他の市民と同じであったと述べている。これが事実であればH5N1ウイルスのタイプが、より人に感染しやすいタイプに変化していることを示唆するものであって、極めて大きな問題となる。

また、患者の妻が購入した鶏には、弱っているなどといった病的な問題があったわけではなかったという。これはH5N1に感染しても元気な鶏がいる可能性を示すものだ。インドネシア(H5N1感染で少なくとも37名死亡)では不良ワクチンの接種が問題となっている。不完全なワクチンを接種された鶏がH5N1ウイルスに感染した場合、鶏は死ぬことなくウイルスがその体内で増殖するため、感染を広げてしまう。これと同じことが中国でも起きている可能性が否定できない。

鶏など動物のH5N1感染事例を発見する前に人感染事例が起きている。本来ならば動物での発生が、環境中にH5N1ウイルスが存在するとの警告になるのであるが、残念ながら人に感染してから慌てて調査するなど、監視体制が十分ではいのが現状といえよう。もちろんこれは中国だけの問題ではない。H5N1の封じ込めには、家禽などの動物における小さな感染事例をしらみつぶしにしていくことが大切であるが、対策が後手に回っているのであれば、いずれ大きな感染事例へと発展し、さらには人類を苦しめるような新しいインフルエンザウイルスの誕生を助けることにもなりかねない。

ところでH5N1への対策だが、当局はシンセンでの患者の確定診断を得たことで、本日より広東省からの生きた鶏の輸入を21日間停止したうえで、香港内での鳥類の監視体制を強化する。さらに空港や港では来港客の体温測定を継続するとともに市民には衛生や健康に関して啓蒙するとしている。またすべての医師には感染疑い例に関して速やかに通報することを申し入れている。

個人レベルでは、手洗いの励行が最も重要な感染予防となる。外出後、食事前、鼻や目など顔に手を触れる前などには必ず石鹸で手を洗うことが大切だ。鳥に触ったり、調理した場合は、手洗いはもちろん調理器具なども十分に洗浄することはいうまでもない。感染症一般に共通した予防であるが、免疫力を落とさないことも大切。しっかり栄養をとり、十分な睡眠時間を確保すること。さらには軽い運動でも良いので、できれば毎日継続することを勧めたい。

現時点では、鳥の病気がたまたま人に感染しただけのこと。この状態でとどまるのであれば特に大きな問題とする必要はない。H5N1ウイルスが今後どのように変化し、拡大していくか常に注目しておきたい。いつ人から人へ感染する新型インフルエンザに変化するかが最も重要なポイントとなる。

必ずその日はやってくる。新しいウイルスがA香港型のように強い感染性を示すのか、あるいはスペイン風邪のように強い毒性も合わせ持つものなのか、専門家にとっても最もと関心が高いころではあるが、今のところその性質を正確に予想することは誰にもできない。

インフルエンザは冬の病気だからと安心していてはいけない。このところ日本ではB型インフルエンザが一部で流行しており、学校閉鎖になったところもあるそうだ。熱帯地方でのインフルエンザ流行にははっきりとしたパターンがないともいう。

神経質になることはないが油断は禁物。不安をあおるような香港の報道に惑わされることなく正確な情報を得て十分に注意していきたい。公的機関から出される一次情報を得るには

ネットでアクセスすることが一番手軽だろう。

香港衛生署: http://www.info.gov.hk/dh/
WHO: http://www.who.int/en/
国立感染症研究所感染症情報センター: http://idsc.nih.go.jp/index-j.html