世界自殺予防デー

毎年9月10日はWHOが定める「世界自殺予防デー」だ。日本での取り組みは今年が初めてで、この日から1週間は「自殺予防週間」として、国や各自治体、あるいはNPO団体など様々なところが自殺予防に向けた取り組みを行なう。

日本の自殺者は、9年連続で3万人を超えており、高い自殺率が低下する兆しは見えない。1年間の全死亡者数がほぼ100万人であるのに対して、自殺者数は約3%であり数字の上ではそれほど多いとは思えないかもしれない。しかし交通事故死が1万人を下回っていることを考えると、自ら命を絶ってしまう人々がたいへん多いということが理解できる。

自殺者の増加は社会問題だ。
自殺の理由は様々であるが、病気を苦にしてという、かつてよく耳にした理由が目立たなくなり、最近では経済的困難や仕事上の悩みが理由となっているケースが目立つ。

自殺は「予防可能な公衆衛生問題」であるとも言われており、異変に周囲が早く気付き、対処することでその多くを思いとどまらせることが可能である。それだけに日常から自分の周囲に注意を向け、小さな異変をできる限り早く見つけてあげることがとても大切になる。

海外でも日本人の自殺は少なくない。香港でも日本人の自殺、あるいは自殺未遂が起きているが、中国に在住する日本人の自殺率がさらに高いという話も時々耳にする。男性の場合はやはり業務上の行き詰まり。これは任された仕事が過大で、能力以上のものを要求されたことが負担になっていたということだけではなく、環境に適応できなかったことなども原因として十分考えられることである。

監督者である上司は部下の様子をよく観察してほしい。いつも元気な挨拶だったのに声が小さくなっている、言葉数が少ないなどちょっとした変化に気づいてあげることが大切だ。もちろんこの程度のことを大げさに取り上げる必要はないが、「何かあったら、何でも相談に乗るよ」程度の声かけをしておくことは有効だ。自分に関心を持ってくれていることを感じとることで、かなり救われるはずだからだ。精神的に追い詰められてくると、自分の周囲が見えなくなる。まだ軽いうちに声をかけることは思いのほか効果が大きいといえよう。

仕事のミスが度重なる、会議中に寝てしまう、遅刻が増える、いつもボーっとしているなど、業務に支障がでてきたら強く介入したい。会社の産業医と相談したり、可能であれば一時帰国の上、カウンセリングを受けさせるなどしたい。カウンセリングのために帰国するなど、あまり考えられないかもしれないが海外では日本人のカウンセラーがきわめて少なく、その受け皿がほとんどないのが現状だからだ。どんなに言葉が達者でも、あるいは反対に現地のカウンセラーがどんなに日本語に長けていても、やはり同じ文化的背景がないと、カウンセリングの効果は得られにくい。

それだけに、小さな芽を見つけて早いうちに摘んでしまうことが求められる。会社など業務上のことだけではない。一般家庭における対応も重要なことだ。駐在員本人はよくても、配偶者が悩みを抱えているケースは決して少なくはないはずだ。海外生活を苦痛に思う配偶者もいることを、ぜひ頭の隅に置いておきたい。口数が少なくなったり、朝起きなくなったり、外出を嫌ったり、人に会わなくなってきたり、とにかくそれまでとは違うことに早く気付いてあげたい。小さなことにも声をかけてあげることは、これは上司部下の関係などでも同じこと。人間関係の基本部分にかかわることで、誰かが自分のことを気にしてくれていることを少しでも感じることができれば、気持ちの持ちようが変わることもある。

声のかけ方には注意が必要だ。真正面から相手の目を見て、というようなことは避けたい。横、あるいは斜め方向からの声かけが良いだろう。はじめはさりげなく声をかけることが大切で、大仰にしてしまうとかえって構えてしまい逆効果になる。

メンタルケアはだれにでもできる。頑張れなどとは決して言ってはいけない。とにかく反論せずに、あるいは下手なアドバイスなどしないで、とことん話を聞いてあげる姿勢が大切だ。これからは職場で上に立つ人は部下のメンタルケアのことも考えなければいけない。もちろん自分が所属長である場合もあるわけだ。単身赴任ではないのであれば夫婦間でメンタルケアができることもあるだろう。自分自身のメンタルケアのために、何でも話ができる相手を見つけられると良いのだが・・・。