中国研修旅行にて赤痢に感染

今年8月、新潟市内の大学の中国研修旅行に参加した大学生から2名の赤痢患者が確認されたことが、その後の検証も含めて国際感染症センターより10月4日付で公表された。

研修は学生23名、引率教官1名、合計24名によって行われたが、旅行中数名が下痢やおう吐など食中毒を疑わせる症状を呈したので、教官は持参の内服薬を与えたという。その後軽快したため予定通り帰国したが、帰国後にも学生一人が同様の症状を訴え医療機関を受診。医師からの情報提供で保健所が動き、旅行参加者のなかで有症状者に対して検便を推奨した。学生一人が帰国後7日目にして細菌性赤痢(S.sonnei)
の診断を受けたが、この学生は帰国後に自ら医療機関を受診した学生とは別で、旅行中に下痢、おう吐はあったものの自然軽快したため医療機関への受診はしていなかったという。

結局、旅行参加者全員と帰国後の接触者73名の検便を行い、さらに1名の学生から赤痢菌(S.sonnei)が検出され、本件で特定された赤痢患者は2名となったが、その後は患者の発生はみなかった。

さて、赤痢というと昔の感染症のように思うかもしれないが、現在も散発的に患者発生は続いており、日本でも稀に集団発生している。先進国だからといって患者発生がないわけではなく、世界的に患者の発生が認められ、香港でも昨年(2006年)、140名の患者が確認されている。

新潟の事例ではいくつかの注意点(問題点)を残している。参加者が帰国時に空港で下痢やおう吐の申告を行わなかったこと。
自覚症状があったものの、感染拡大についての意識が低く、飲食店などでアルバイトをしていたことが大きな問題点としてあげられる。

日本では帰国時の健康申告は任意であり、そのまま入院などで拘束される可能性を嫌って申告はされにくいと思われる。したがって水際で感染症が輸入されることを阻止することは難しいが、2次感染の防止という意識があれば周囲も含めて医療機関への受診を促し、飲食店でのアルバイトを禁止する等の措置もとられていたかもしれない。新潟の事例では、飲食店でも旅行中のことを聞いているにもかかわらず、下痢症状がないからと働かせていたそうだ。

1998年、長崎で水道水が原因とみられる赤痢集団感染が起きており、821名もの患者が特定された。
今回、新潟でも集団感染につながっていた可能性もあり、特に海外旅行で感染して国内に持ち込まれる輸入感染症に関して、改めて注意を促されるべきだろう。

上記は日本の事例としてあげたが、香港でも輸入感染症は少なくない。
2006年、香港では140名の赤痢患者が発生しているが、実際にはその何倍もの患者がいたとしても決して不思議ではない。
日本のように入国時の申告制度はないが、旅行中あるいは旅行後に体調を壊したときなど、決して甘く見ることなどせず、直ちに最寄りの医療機関を受診し渡航先などの情報を医師に詳しく伝えるべきだ。

日本では、戦後しばらくは毎年十万人を超える赤痢患者が発生し、2万人もの死者をみたが、1965年ころから患者数は激減し、現在の患者数は毎年1000名くらいで、その半数以上は輸入例とみられている。
赤痢は4タイプに分けられるが、現在認められる患者の多くは、今回新潟でも特定されたS.Sonneiで、症状が軽いのが特徴。多くの感染者は赤痢と知らずに自然治癒していると思われる。

赤痢菌の感染は、一般食中毒と同じく飲食物だ。特に途上国においては生ものや生水、氷などは飲食しないことが大切だ。