ノロウイルス流行中
下痢やおう吐で大変な思いをしたという話が最近多い。夜中に急に吐き気で目覚めたものの、トイレに行く間もなく吐いてしまった話や、3日3晩下痢に苦しんだなどという話を立て続けに耳にした。
病院では「ウイルス性のものですね」「食中毒かもしれません」などと、漠然とした診断を受けるものの、確定診断が下されることはないようだ。ウイルスや食中毒菌を特定しているわけでは仕方がないことであるが、おそらくその多くはノロウイルスが原因であると思われる。
ノロウイルス中毒は冬場に流行することが多く、年間を通して最も多く発生する食中毒だ。このウイルスの感染力は極めて強く、非常に少ないウイルス数で感染してしまうため、集団生活の場でも空気感染様の感染拡大を示し、一気に患者数が増えてしまうことも珍しいことではない。
感染後、早ければ数時間、遅くとも1~2日程度で突然発症する。おう吐、下痢といった典型的な食中毒症状に加えて、発熱や寒気といった風邪と似た症状が出ることが多いのも特徴だ。激しい症状の割には予後は良く、重症化することは極めてまれである。
従来は生カキなど貝類の生食が最も危険であるといわれていたが、特に日本のカキは予防対策(無菌化処理)がとられるようになってきたので、安全性は格段に高くなっている。日本ではカキが原因であるノロウイルス食中毒が激減している半面、高齢者施設など集団生活の場などで発生するノロウイルス感染症〈食中毒とは限らない)が多くなっている。つまり、食中毒ではなく通常の感染症としての扱いもされる場合が多くなっているのが現状だ。
家庭内で患者が発生した場合は、感染力が強いだけに注意しないと一気に全員が感染してしまうこともある。おう吐物の処理や下痢の後のトイレの掃除には特に細心の注意が必要となる。
おう吐物からは、その処理する人以外はできる限り遠ざかること。換気も大切。処理には手袋、マスクを着用すること。できればゴーグルを着用し、目からの感染を防ぐことが望ましいとの意見もある。そこまでしなければいけないのかと驚くが、それだけ感染力が強いことを意味している。処理後の手洗いはもちろんであるが、床面などは塩素系漂白剤で消毒しておくこと。
トイレも下痢の後は極めて危険な状態になる。換気扇をつけた状態で、少しドアを開けて空気の流れを作っておくと汚染された空気が排泄されやすい。下痢やおう吐の際にウイルスを含むミストが発生し、これが感染拡大につながるため、換気は重要なポイントになる。
患者の下着は他の家族の洗濯ものとは一緒に洗わないこと。特に、下痢便やおう吐物で汚れてしまった場合は、先に塩素系漂白剤で消毒してから洗濯することが望ましい。洗濯槽の汚染を回避して、別に洗うにしても他の人の洗濯物を二次的に汚染させてしまうことを防ぐのが狙いだ。
それほどまでに危険なのか?そんなに神経質になる必要があるのかという疑問もないわけではない。ノロウイルスは極めて感染力が強いので、そこまで厳重な注意が必要であることは間違いないが、その一方で免疫力さえ落ちていなければ感染しても発症は免れる。
感染しないようにする予防法とともに、感染しても発症しない免疫力を維持することも大切だ。この点はインフルエンザでも同じ。手洗いの励行、患者から遠ざかること、部屋の換気を良くするなどは共通する。さらに適切な栄養摂取、休養も大切だ。難しいことではあるもののストレスマネージメントもできれば言うことはない。
下痢は大量の水分を失う。たとえ食べることができなくても、水分は十分摂取したい。特に子供の場合など、親がつきっきりで小さなスプーンからでも水分補給する必要もある。下痢の際は、下痢止めではなく水分補給が優先であることはO157騒ぎの際に認識が広まったようだ。またおう吐が続くと電解質も失われるので、スポーツドリンクで水分補給することも効率的だろう。