隠れメタボリック
メタボリック症候群の概念はかなり昔から提唱されていたが一般的に知れ渡るようになったのは最近になってからのこと。
私が初めてメタボリック症候群を知った10年以上前には、まさか流行語になるほど広く認識されるようになるとは思いもしなかった。
メタボリック症候群に関しての概念は相当古くから提唱されており、「死の三重奏」とか「死の四重奏」とか呼ばれていた。つまり脂質異常、高血圧、高血糖の三重奏、これに肥満が加わって四重奏だ。さらに喫煙を加えて五重奏と呼ばれることもある。
メタボリック症候群は腹囲を絶対条件とする。これは、諸悪の根源となる内臓脂肪の蓄積具合を間接的におおざっぱに把握する手段として採用されたものだ。
日本の場合、男性85cm以上、女性90cm以上という条件を満たしていない限り、どんなに血圧が高くても、驚くほどの脂質異常があろうとも、あるいは糖尿病の治療を受けていたとしても、メタボリック症候群と診断されることはなく、その指導対象(特定保健指導)からも外されてしまう。
メタボリック症候群と診断されていなくても、診断されている人よりも死亡リスクが高いと思われる人が、相当数いることは間違いないだろう。事実、厚労省の調査結果では、「40~70歳の男女約3万人を対象に調べたところ、腹囲が規準に達しない人でも、検査値の異常が増える(重なる)につれて、心筋梗塞などの発症リスクが増えていた」という。(今朝の報道より)
この事実は特定健診制度(メタボ健診制度)を設けるにあたって当初から指摘されていたことだ。しかも男女の腹囲の規準が海外の基準とは反対になっているなど、いくつもの疑問点があげられていたにもかかわらず制度は見切り発車されてしまった。
腹囲がどうかという前に、体重の変化率に注目してほしい。20歳時点での体重を覚えているだろうか。多くの人にとって身長の伸びが完全に止まって、これから「横方向の成長」つまり肥満傾向が表れるようになるスタートとなる時だ。このときの体重をベストとして、どのくらい体重増加しているのかが重要な数字になる。学生時代に身体をかなり鍛えていた人にとっては判断が難しいが、普通の人では増えてしまった体重の3割を減量する努力をすると、さまざまな異常が驚くほど改善することが期待できる。30歳くらいであれば、なるべく元の体重に戻す努力をしてほしい。体重増加がない人ももちろん少なくないが、海外勤務など大きな環境変化が太り始めるきっかけになることもあるので、とにかく絶対太らないという努力を怠ってはいけない。たとえ100gでも体重が増えないようにすること!その気持ちが大切で、毎日体重計(デジタルが良い)に乗ることだ。
昨日の配信で紹介した書籍「空腹力」を教えていただいた私のお客様も、とりあえず実行してみた私自身も、減量が血液検査の結果を大きく改善している。肥満傾向(体重増加)があり、検査結果に一つでも二つでも問題が指摘されている人は、とにかく痩せることをお勧めしたい。痩せることで命が伸ばせます。将来寝たきりになるリスクが間違いなく少なくなります。
メタボリック症候群の規準は近い将来変わる可能性がある。しかし、どのような基準ができようと個人レベルでは参考にしかならず、医療者が患者をふるい分ける判断基準に使われるモノサシになるだけの話だ。健康診断の結果に注目して、現在の状況がどのようなもので何をする必要があるのか、それぞれ個人で判断する必要があるだろう。