悪玉コレステロール測定への疑問
2008年4月に始まった特定健診・特定保健指導の制度(メタボ検診)が丸2年を迎え、今年は制度開始から5年後の評価判定までのほぼ折り返し点になるが、これまでその意義や規準に関して多くの疑問が投げかけられてきた。それでも、評価判定で目標を達成できていないと判断されると後期高齢者向け医療費への拠出金を増額されるとあって、特に企業の健康保険組合では、疑問を感じながらも国の指針に従っている状態だ。
ここにきて悪玉コレステロールの測定に関して、日本動脈硬化学会から大きな疑問が投げかけられている。日本動脈硬化学会は、脂質関係の規準や判断に関して多くの研究調査を行っており、総コレステロールの治療ターゲットに関しても医学界に提案したこともある。ちなみに総コレステロールに関しては、高血圧、高中性脂肪、高血糖、喫煙といった循環器のリスクを持たない人に対しては180~240mg/dlを適切なレンジとし、これに合わせて高コレステロールの治療ターゲットを240mg/dlにするよう提案した。私・個人的にもこのレンジは極めて適切であると思うが、医学界からはまったく支持を受けなかった。ここで説明すると長くなるので詳しくは控えるが、医学界の不支持は決して患者の立場に立ったものではないことは確かだ。
さて、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)に関して何が問題かというと、検査法による測定誤差が大き過ぎその結果を判断根拠とすることができないこと。つまりコストをかけて直接測定をする意味がないばかりか危険であることもわかってきたからだ。
同学会では2007年に脂質異常症を判断するための指標としてLDLコレステロール値の採用を提案し、総コレステロール値はその判断材料から外している。ただし総コレステロールを測定しないのではなく、総コレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪を測定し、それらの値からLDLコレステロールを計算法で算定する方法をとっている。
特定健診が制度化されたことで、検査業界ではLDLコレステロールの直接法を開発したが、その精度に大きなばらつきが生じていることが判明し、今回の提言につながっている。
なお悪玉コレステロールと呼ばれるLDLコレステロールは決して悪いものではなく、肝臓で作られた(代謝された)コレステロールを全身の細胞膜やホルモンの原料として使うために末梢に運ばれていくコレステロールのことを指す。ただし多すぎると動脈硬化の原因となる。
日本のメタボ健診の規準は、諸外国のものと比べて様々な疑問があることから、今回の提案だけではなく今後徐々に見直されていくものと思われる。