風邪とインフルエンザ

風邪とインフルエンザを似たような病気だと思っている人が少なくはない。風邪がひどくなったものがインフルエンザのような感覚でいるようであるが、実際はまったく違う病気。
インフルエンザでは毎年50万人くらいが世界中で死亡しており、日本だけでもその数は1万人以上にもなるという。それに対して、風邪で死ぬことはないと思っていても良い。

風邪は風邪症候群といわれるように、呼吸器を中心に様々な症状をもたらす。薬の宣伝ではないが、くしゃみ、鼻水、鼻づまり・・・。これに頭痛発熱が加わることが多いが、インフルエンザと違い発熱は38度程度に留まる。これに下痢などの腹部症状が出ることもあるが、病期はせいぜい4~5日。

風邪症状を起こす原因はウイルスを中心に200種類を超える微生物があげられる。さらに原因ウイルスのタイプまで数えるとさらにその何倍にもなるので、ワクチンの開発は極めて困難だ。

一般に風邪には抗生物質は無効である。風邪と診断しておいて抗生物質を処方する医師は今も非常に多いが、日本呼吸器学会では、細菌性の2次感染予防を含めて無意味な投与であると断言している。風邪などにたいする無用な抗生物質の過剰投与は、最近話題になっているスーパー耐性菌の出現の大きな原因となっている。

風邪と診断されたら身体を休めること。風邪薬といわれる薬も対症療法にしか過ぎないもの。自分の免疫力を信じてじっと寝ていれば2~3日で回復することも多い。(現実には休めない人がほとんでだが・・・)

一方、インフルエンザは怖い病気だ。しかし昨年の春から流行した新型インフレンザ(H1N1)は、予想に反して被害が少なかった。後から思うと、かなり騒ぎ過ぎていたともいえる。パニックに近い状態は日本が酷かったが、その割には正しい対策ができておらず、いたずらに不安が膨らんでしまっていたといえる。日本での死亡者数が200人程度で済んだことは、タミフルなどの迅速な投与が奏しているとも言われているので、皆が不安になり、体調不良に際して積極的に医療機関を受診していたことが良かったともいわれるが、個人的にはこの意見には疑問もある。日本ではこれまでもタミフルは極めて大量に使用されてきている。それにもかかわらず従来の季節性インフルエンザでは毎年1万人を超える死者がでているのだ。
ちなみに前期インフルエンザシーズンには、季節性インフルエンザの流行が確認されていないので、インフルエンザによる死亡は極端に減っているはずだ。歴史的にも新型インフルエンザが生まれ出た年には、季節性インフルエンザの流行が抑えられている事実があるそうだ。私自身専門家にこの点を質してみたが、この理由についての明確な回答はない。

今年はインフルエンザ様症状を訴える小さな集団感染例がすでに香港でも散発している。従来型のインフルエンザウイルスも検出されており、実質的なインフルエンザシーズンの到来とも言える。あわせて普通感冒といわれる風邪症状を訴える人も多くなってきたので、こちらも注意が必要だ。インフルエンザは急に症状が進む。悪寒がしたと思ったら急激な発熱。高熱は40度を超えることもある。全身の関節や筋肉が痛むことも多く、呼吸器も含めて全身疾患といえ、肺炎や脳症で死亡することもある。

今年のインフルエンザワクチンは昨年の新型インフルエンザに対するワクチンも成分に加えられている。ワクチンは前年の流行状況をみてその株を決定するので、実際に流行と異なって効果がない場合もある。だから接種しないと言い切る人もいるが、身体に負担が少ない安全性が高いワクチンであり、値段的にも比較的安い。(医療機関によって接種料金は大幅に異なる)最寄りの医療機関に確認し、そろそろ接種することを勧めたい。

最後に、風邪もインフルエンザも、最も効果的な予防法は手洗いだ。手洗いは多くの感染症予防に極めて効果的であることを否定する専門家はいない。