肥満調査について

滋賀医科大学生活習慣病予防センターがまとめた調査で、中年男性の典型的な肥満である「ビール腹」は、ビールだけのせいではないという結論を出したことがマスコミ報道されています。

この調査の報道を見て、私は目を疑ってしまいました。こんな研究(調査)を大学レベルで行っていることに唖然とするとともに、マスコミが取り上げていることも信じられない思いです。余程ニュースがなかったのでしょうか。大学ってこの程度の研究をしていれば、良いところなんでしょうか?きっとこのレベルの研究であっても、難しいタイトルをつけて学会発表するのでしょうね。「ビール腹」は、ビール好きな男性のお腹がポッこり出ている事を揶揄した表現で、特にビールが原因であるなど誰もまともには思ってはいないのではないでしょうか。まして大学の専門家が調査研究するような対象ではないと思います。私が小学生なら、「街のおとうさんのビール腹研究」と称して夏休みの宿題の自由研究として提出するかもしれません。サンプルは限られてしまいますが、先生がちょっと指導してあげれば小学生でもできることです。ま、そんなことを書くのが今回の医療情報の目的ではありませんので、早速本題に入ります。

「ビール腹」は典型的な内臓脂肪型肥満で、男性に多く認められる肥満のタイプです。内臓周囲に大量の脂肪がつくことでお腹が押し出されていきます。出っ張ったお腹はその肉を掴もうとしても張っていて多くつかむことができません。皮下脂肪が多ければ(女性型肥満の典型)多くの肉をつかむ事ができますが、外から掴める脂肪は一般的に問題にはなりません。お腹がポッこりと出てしまう内臓脂肪型肥満は循環器系疾患のリスクが高いことが多くこのようなタイプの人は、とにかく減量が必要になります。腹囲が大きい男性は、健康診断の結果でも循環器系疾患のリスクが高いことが容易に読み取れます。

内臓脂肪って何かという質問を時々受けます。確かに具体的にイメージしにくいかもしれません。脂肪肝と混同している人もありますが、この脂肪は内臓の周囲についている脂肪のことです。生の鶏肝を見たことがありますか。その周囲についている黄色の脂、これが内臓脂肪です。卵を産むことだけを目的とされ、ケージで運動もできないニワトリには内臓脂肪が多くついています。人間の内臓脂肪も同じです。生物学的に雄には内臓脂肪がある程度必要ですが、多くなりすぎた内臓脂肪は、血圧を上昇させるほか、脂質(主に中性脂肪)や血糖の上昇(糖尿病の原因)を招く原因となります。もちろん脂肪肝をきたすことも珍しくはありません。当然ですが肝機能も悪化します。動脈硬化が進行することで、心筋梗塞や脳卒中のリスクに直結し、余命が短くなることは当然です。

太く短く生きればいいんだといって、不摂生を重ねている人もありますが、このような人に限って「細~~~~く、長い」人生になりかねません。将来、寝たきりになって下の世話まで周囲に頼まなければ生きていけない姿を想像してみてください。誰もがそんな事態は避けたいはずですよね。妻にとってみれば、将来夫を介護しなければいけなくなる可能性が高くなるわけであり、食欲に任せて食べてしまう夫には、将来の自分のためにも厳しい態度で挑むべきでしょう。(笑) 夫が喜ぶからたくさん食べてもらうといってニッコリしている場合ではないのです。

太っている人、特に内臓脂肪型肥満、ここで言うビール腹の男性は、とにかく減量しなければいけません。人のためでも、家族のためでもありません。自分のためです。痩せようとしてアルコールの種類を選ぼうとする人がありますが、まったく意味がないことです。ビールより焼酎が良いとか、ワインや日本酒よりブランデーやウイスキーが良いといっている人もありますが、大きな誤解です。酒類のカロリーは、含まれるアルコール(エチルアルコール)のカロリーをも加えた総カロリーが表示されます。ところがエチルアルコールのカロリーは実質的にゼロ(エンプティーカロリー)であり、体内でエネルギーに転換されていく訳でも無駄な肉(脂肪)として蓄積されるものではなく、最後は水と二酸化炭素に分解されてしまいます。ただしアルコールが分解される過程で、血糖を原料に中性脂肪が大量に生まれてきます。だから低血糖になって、脳は「空腹だからもっと食え」という誤った指令を出してしまいます。飲んだ後のラーメンが美味い!これは誤った指令にだまされているだけで、極めて深刻なオーバーカロリーとなります。

繰り返しますが、お酒をたくさん飲むから太るのではありません。一緒に食べているものが肥満の原因になるのです。普通の食事に比べると飲酒している時間は長く、そんなに食べていないと思っていても知らず知らず食べ過ぎてしまうのです。加えて締めのラーメン。最悪です。

飲酒は限度さえ守れば問題は少ないものです。とにかく食べる量を減らしましょう。健康に良いのは腹7分目で、8分目ではありません。何を食べてはいけないということではありません。巷にはびこる健康情報や栄養指導。情報や指導を行動として守ろうとしても普通の人には極めて難しいものです。
食品を吟味してより良いものを選ぶことは確かに大切ですが太っていて健康診断で問題を指摘されているような人にはあまり意味がないことです。
とにかく食べないこと! 痩せること!これだけです。

最後に・・・
一日中動かないでいても3食食べることができる動物はヒトだけであって、これは極めて特異な存在です。獲物や餌を探し回っている野生動物は、時には一日中何も食べることができないこともあります。それでも歩きまわって餌を探さなければいけないのです。哺乳動物はヒトも含めてDNAに大きな違いはありません。このことを良く考え自分の理解として「気持ちの中」に落とし込んでおくとダイエットに成功しやすく、リバウンドも避けられると思います。

注意
現在、心疾患や糖尿病などすでに病気治療を受けている人は無理なダイエットは避けて、医師に相談してください。本日のお話しは、あくまでも「自分は一応健康である」と思っている病気治療中ではない人(特に男性)向けです。体型的に太っていてもダイエットを必要としない人(女性に多い)が無理にダイエットすると健康を損ねることがあります。

長文、失礼しました。
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