健康に生きるために(3) 『自然とともに、自然を忘れないよう』

前2回のお話しは、野生動物とヒトは生物学的に大きな違いがないにもかかわらず、その摂食や運動においてまったく違う生き方をしている。このことが生物学的にヒトが異質であるという内容でした。今日はそのまとめとします。

ところで私の山歩きのスタイルは、急がないこと。無理しないで歩くことです。そして周囲のものを見て、聴いて、触れて、場合によっては食べるなど五感を駆使することです。撮影する写真は毎回200~300枚くらいです。
このなかで、ゆっくり歩くことは、動物が餌を探す行動そのもの。毎日単純な行動を繰り返しているのが野生動物の世界です。私自身は、先週末に歩きながら食べたものは野イチゴ、そしてパンダナス(タコの木)の実でした。どちらも甘味はかすかなものです。野イチゴは酸っぱさが際立って、甘味はほんのわずか。パンダナスは石のように硬い外皮には歯が立ちませんが一番中心側だけにちょっとだけ甘味を感じる果肉があるのです。どちらもこの季節にしかありません。ヒトも大昔に食べていたようです。香港歴史博物館の石器時代を再現したコーナーにもパンダナスの実が置かれていました。ちなみにパンダナスは家屋の資材としても使われます。暑い中を歩いて、のどが渇き、お腹がすいたりしていると、こんなものでもとても美味しく感じるものです。

さて、なぜこのようなことを書いたかというと、現代の人々は甘味の強いもの、塩味がしっかり付いたものなどを好み過ぎていると思い、それが多くの病気の原因になっていると思うからです。もちろん食べものを得るために歩くことも必要とぜず、さらには食べ過ぎているわけですから健康に良いわけがありません。現代人は自然の味覚をほとんど忘れてしまっているのではないでしょうか。

歩いていて思ったこと…
坂道で息が荒くなり呼吸が苦しくなってきた時にいつも思うことですがこの一呼吸一呼吸は二酸化炭素を吐き出していること。つまり体内の炭素を吸気で得られた酸素と反応させてエネルギーを得て、その残りかすを一生懸命に吐きだしていることに他ならないということ。ひと呼吸で排出される炭素量に匹敵するだけの極々小さな数字でしかありませんが、確実に体重減少につながっているといえるのです。そう思うと苦しくても頑張れます。
(本当は頑張るほどの運動は良くないのですけど…)

動物は基本的に走りません。もちろんお互いに競争もしません。走るときは獲物を得るときと危険回避するときだけ。つまり無駄なエネルギーは使わないのです。ヒトも同じではないでしょうか。必要最小限のエネルギー摂取にとどめて、できる限り歩くこと。単純ではありますが、もっとも大切なことです。

健康ブームで何を食べればよいとか、何をすればよいとか、とにかく様々な健康「エセ」情報が氾濫していますが、決してそれらに惑わされてはいけません。私の情報もその一つかもしれませんので、どのように受けとめられても構いませんが、私が書いていることはヒトが生きるための基本であると私は信じています。これは医療の世界に身をおいて約30年間に得られた確信です。

もちろん現代の食生活などを今さら否定しても意味がありません。基本になることをしっかりとらえて理解したうえで、さてどのような生活スタイルをとるべきかを考えていただきたのです。
「長生きなんかしたくない」と言い切る方もありますが、それも確かに生き方ではあります
しかし、健康に生きることをしっかり意識しておかないと、「太く短く」生きたいと思っていたにもかかわらず、たとえば脳梗塞で倒れて介護が必要となって、それこそ本人の意思とはまったく反対に「細く長く」生かされてしまう不幸にも陥る可能性が高くなります。介護を受けるのも、介護を施す側になることもとても大変なことです。このことは健康である若い時からしっかり考えておくべきであり、健康診断などで循環器系疾患の可能性を指摘された人の場合にはなおさら危機感を持って意識するべきです。

ピンピンコロリが一番です。日本の国民医療費が毎年急増していますが、誰もが食べ過ぎを避け、できれば粗食を心がけ、車に頼ることなく一生懸命に歩くようになれば、まさに医者いらずでしょう。医療費は確実に減少します。どうせお金をかけるのであれば、本当の意味で健康指導できる医師などへの報酬を大幅に上げるべきです。ちょっと余談ですが、高齢の私の父が、1年間病院に行かなかったからといって自治体から毎年感謝状が贈られている。病院に行かないことがそれだけ珍しいことなのでしょうが、ちょっとおかしくはないでしょうか。

野生動物は長生きしてない? そんな声が聞こえてきますが、彼らは弱肉強食の世界。病気の治療を受けることもできない厳しい世界に身をおいていますから、その種としての天寿を全うできないことがほとんどです。人に飼われている動物は違います。本当の意味で健康的に育てれば一般に知られているよりずっと長生きできます。天敵から確実に保護された上に、良質な餌が与えられるわけであり、もちろん病気になれば治療を受けさせてもらえるわけですから当然でしょう。ただ過保護な、あるいは動物のことを理解しないでペットを飼っている人も少なくはなく、このような場合には反対に短命になってしまう例もあり得ます。

人でも動物でも生きていく「環境」はとても大切です。
ヒトはその環境を自分自身で整えることが可能であり、どのようにするのかは、正に自己責任といえましょう。