胃がん検診に対する厚労省の誤認

厚労省は公費で行うがん検診について8年ぶりに改定したが、この中で胃部内視鏡検査に関する医学論文の質が低く科学的な根拠が不十分であるとして、今後もバリウム検査を公費検診に推奨するという。

これは厚労省研究班が2005年以降の医学論文の「質」を評価して指針の改訂作業を行ったものであるが、世界的に採用されなくなってきている胃部バリウム検査ではあるものの、これに関しての論文が日本に多くあることは確かで、中には医学界で「名前がある先生」が書いているものも少なくないと思われます。(すみません、ここは想像です)歴史が比較的浅い内視鏡検査に関しては、どちらかというと若手の研究者が書いているものが多い。(これもたぶんです)
若手に能力がない、質が低い論文しか書けないと言っているわけでは決してなく、私が想像するにその「力関係」が判断に反映されているのではないかということだ。

バリウム検査は長年実施されてきた実績がある、手間がかからない(日本ではレントゲン技師が検査できる)検査であることを利点としている。これに対して、内視鏡検査ではがんを見つける制度が高いことが利点としてあげられている。受診者の立場で考えれば、どちらがよいのか明白だ。

欠点はというと、バリウムは高齢受診者の誤嚥、異常が認められた場合内視鏡検査が必要になること。研究班があげている内視鏡検査の欠点には、まったく呆れる。「治療の必要がない早期のがんも発見する恐れがある」としている。治療の必要がない早期のがんとは、いったい何を指すのか?肺がんなら分かる。あまりにも早期の肺がんを治療しようとすると、患者への負担が極めて大きいことは確かだ。胃がんであれば内視鏡的に切除してしまうことも可能で、その場合は入院の必要もないこともある。ごく早期に胃がんを発見できることを欠点としてあげることは信じがたい!

現在日本では年間約13万人が胃がんで死亡しており、これは肺がんに次いで2番目に多い数だ。3番目はというと大腸がんだ。胃がんと大腸がんは、内視鏡検査で早期発見できる。早期発見して治療すれば死ななくてもすむ。バリウム検査を多くの人が受けているにもかかわらず、胃がんで死亡する人がそれほど減らないのはなぜなのか? 説明するまでもないだろう。

がん発見率と、発見されたがん患者の5年生存率。これらをそれぞれの検査法で示して欲しいものだ。おそらく厚労省では出せない数字だ。

自分の身は自分で守る。これこそ自己責任だ。今回の発表を見て、個人的にもつくづく感じたものである。