鳥インフルエンザ・WHO警戒強化
WHOの西太平洋事務所の尾身茂所長が、6月10日に北京で緊急記者会見を行った。
中国では青海省に続き、新疆省でも多くのガチョウがH5N1ウイルスに感染して死亡している。水鳥の多くはこのウイルスに感染しても無症状であったはずなのに今回は多数死亡していることから、ウイルスはさらに変化してより強毒化していることが明らかだという。
青海省では多くの人が感染し、多数の隔離患者がいるというニュースもネットで流れたが、WHOの中国への調査はまだなされておらず、すべての情報はうわさとしてしか評価できない。ベトナムやタイではすでに複数の人命が奪われているが、中国からの情報が確かであればH5N1ウイルスは、さらにその性質を変えているものと思われる。
人-人感染を世界中で起こしはじめる不吉な下準備がなされていることは間違いなさそうだ。
鳥インフルエンザというと、あたかも鳥だけの病気のように聞こえるが、このウイルスが変化して人のインフルエンザウイルスになる。これが新型インフルエンザだ。
現在、抗インフルエンザ薬であるタミフルを各国政府が備蓄する動きがあるが、スイスのロッシュ社でしか生産していないので、現在フル稼働で生産しているものの必要量の確保は難しい状況だ。さらにワクチンの開発も遅れ気味で、現在のところ開発されるのは早くて来年の前半と思われる。また、たとえワクチン開発に成功しても、日々変化を遂げるウイルスにその時点で効果が期待できるのかは未知数であるとしかいえない。
ところで日本での「新型インフルエンザ」に関する報道が少ないのがたいへん気になるところだ。煽って不安を呼び起こすような報道を避けようという報道側の自主規制があるのか、インフルエンザ報道に関して及び腰である感が否めない。日本政府も対策にあたっていることは確かであるが、病院などの現場の体制整備などはまったくといってよいほど手付かずのままだ。また報道がないことで、一般の人の知識や危険度の認識もほとんどないと思われる。
鳥インフルエンザウイルスはそんなに遠くない将来、確実に人のインフルエンザウイルスに変化をとげる。WHO尾身所長は、いつ、何がおきてもおかしくはない状況だと言っているが、明日にも現実の問題となるかもしれないと認識しておく必要がある。
ひとたび流行が始まると、控えめにみて1億人が感染して、数百万人が死亡する可能性があるといわれる。このような新興感染症に対し個人レベルでの対策はどうすればよいのだろうか。今のところ具体的にその対応を指示したものはない。しかし、いくら流行しても感染しない人、あるいはたとえ感染しても発症しない人の方が多いわけだ。発症してしまう人と何が違うのか?これは間違いなく免疫力の差が反映されるに違いない。もちろん衛生概念の差にも左右されるだろうが、今のところ新型インフルエンザがどのような感染経路で人-人感染を起こすのか判らないので、従来のインフルエンザの感染経路を参考としておくしかない。
手洗いの励行、十分な休息(睡眠)、十分な栄養、適度な運動などが感染予防や免疫力強化法としてあげられるが、特別なものは何もなく、従来の風邪予防としていわれてきたことばかりだ。ストレスマネージメントも大切だ。SARSの流行で得た感染症予防の知識が生かされることは間違いないだろう。
20世紀のはじめに新型インフルエンザ(スペイン風邪)が大流行して3000万人が死亡したが、時代は違う。新しい感染症が世界中に拡散するスピードは現在は比較にならないほど速いものの、予防医学に対する知識量も、現代は桁違いに多い。
WHOはもちろん、各国政府も扱いに温度差があるものの新型インフルエンザ対策を重要課題として位置付けている。渡り鳥の感染調査、ウイルス解析、人への感染経路、その臨床症状など、これまでに膨大な研究成果の蓄積があると思われる。
新型インフルエンザは決して侮ることができない感染症であるが、大流行を阻止できる可能性を期待したい。