中東呼吸器症候群MERS

2012年9月、中東に渡航歴がある重症肺炎患者から、新種のコロナウイルスが分離されたとの報告が英国政府よりWHOになされたのが、MERSの初発例として記録されています。

MERSコロナウイルスと呼ばれる新型のウイルスは、感染発症すると重篤な肺炎を起こし、さらに腎疾患も併発することを特徴とします。現在のところ4割ほどの致死率とされていますが、治療法がなく、発症しても隔離されて対症療法を受けるだけで、自然回復を待つしかありません。

最近、韓国での感染者数が増えており、初期対応に遅れた韓国政府に対して、韓国国内から大きな非難がおきており、関係が深い日本などでは水際での対策を強化しています。事態をいまさらのように重く見た韓国政府は、患者と接触したと思われる人の隔離政策をおこなっており、現在約1600人を病院や自宅で隔離しています。韓国ではこれまでに36人の感染者が確認されており、うち3人が死亡していることを背景に、韓国では1100以上もの教育機関が休校になるなど、社会的な影響が大きくなっています。

MERSコロナウイルスは、2003年に世界を震撼させた新型肺炎SARSを彷彿させます。実際、このウイルスはSARSと近縁種にあたるウイルスであり、どちらもコロナウイルスという犬やネコなど動物にとって重要なウイルスの変種です。SARSはコウモリが起源だったとの説が有力であるのに対し、今問題になっているMERSコロナウイルスはラクダが起源であろうとされいます。感染が徐々に拡大しており大変不気味ではあるものの、SARSとは決定的に違うのは、初期に感染を拡大させたスーパースプレッダーの存在がないこと。最初の患者が確認されてからの患者数の増加が非常に緩やかであり、新規患者も院内感染など感染者との濃厚な接触に限られているようです。また現在感染発症者に対する死亡率を4割くらいであると見込んでいますが、感染しても発症していない人も少なくない可能性もあり、死亡率はかなり下がるのではないかとみる専門家もいます。

今回の事態に対して、2週間程度新規感染者を出さない事ができれば、収束に向かうのではないかと比較的楽観視する専門家もいますが、個人レベルでも対策を講じておくことは必要です。インフルエンザウイルスと違って感染力が非常に低いので、個人での対策は非常に有効かと思われます。感染予防は風邪やインフルエンザと同じで、手洗いの励行や咳エチケットです。中東や韓国など感染者が出ている地域からの帰国後、発熱や咳などの症状が出た場合は、早めに医師に相談すること。マスクをするなど咳エチケットを守ることが大切です。

今回問題となっているウイルスはヒトコブラクダが起源だと疑われていますが、新型のウイルスは野生動物との直接的・間接的接触が起源となっており、ヒトと野生動物との「接点」に関して今一度考えなければいけない機会にもなると思います。人類の、開発と環境問題が関連してくることでもあります。