下水処理水中のノロウイルス
本日の日本の新聞等で、下水処理水に含まれるノロウイルスの濃度が、冬季は夏季の60倍に達するとの報道があった。ノロウイルスが冬場の方が感染しやすいことは常識だが、具体的にウイルス量を定量した研修報告は初めてだろう。ちなみに下水処理場への流入水(汚水)に含まれるノロウイルス量は、夏と冬では40倍の開きがあったという。
カキなどで食中毒を起こすことで有名なノロウイルスは、通常の下水処理で完全に死滅することはなく、処理場へ流入するウイルスの約1%が処理後に残って、処理水と共に河川や海に放流される。
ノロウイルスは人の腸内で増殖するが、環境中で増えることはない。海水などに含まれるウイルスを貝類がその体内に蓄積し、それを生で食べることで食中毒を起こすことになる。熱には弱いので、完全に火を通せばまったく問題がないが、生カキからの感染はたいへんリスクが大きいといえる。
カキの生産地では、紫外線殺菌した海水でカキを無菌化する努力もされているが、冬はカキの活動が鈍く、その体内からノロウイルスを完全に除くことは難しいようだ。カキの産地近くの下水処理場では膜処理するなど、さらに高度な汚水処理をしなければノロウイルス感染を少なくすることは困難だ。
ノロウイルスは摂取した人すべてが食中毒を発症するわけではない。発症しても極めて軽くすむ場合もあるが、これは本人の免疫力に大いに関連する。少なくとも体調が悪いときには、生カキを食べることは控えたい。新鮮だから安心というわけにはいかない。カキの体内でウイルスが増殖することはないので、いくら鮮度が良くても食中毒の危険性とはまったく関係がない。
日本のある保健所では、管内の飲食店に生カキを出さないように指導しているところもあるそうだ。それだけ危険性が大きいということ。どんなに衛生管理に注意していたとしても感染事故を防ぐことはできないうえ、集団食中毒となれば即営業停止処分を食らってしまうので、飲食店にとっては頭が痛い問題だ。
ノロウイルスは食中毒であるばかりではなく、人・人感染をおこすことも知られている。下痢の子供の看病をするうちに感染することが多いので、家族内で下痢患者がある場合は十分に注意する必要がある。下痢便を処理するときは必ずゴム手袋を着用することが必要。もちろん調理前や食事前には良く手洗いすることも感染予防としては基本となる。
3月くらいまではノロウイルス感染が多い季節だ。2~3日で回復する感染症ではあるが、しばらくの間は十分に注意したいものだ。