薬剤耐性黄色ブドウ球菌

今年、薬剤耐性黄色ブドウ球菌の感染者が9名発生し、そのうち37歳の女性が脳膜炎を併発して死亡したことから、衛生署では市民に注意を呼びかけている。

薬剤耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は従来より病院内の感染が問題になっていたが、今回の注意は一般市民レベルでの感染の危険性が高まっていることに対する警告だ。

MRSAは病院や老人施設などではすでに定着した病原菌であると認識されているものの、一般の人への感染は極めて稀であると思われてきた。しかし香港では昨年7件、今年はすでに9件の患者発生を確認しており、誰にとっても感染について十分な注意が必要になってきているとみられる。

黄色ブドウ球菌は健康人でも皮膚や口腔に常在するありふれた細菌であり、免疫力が落ちた場合など以外では通常問題になることはない。しかし昨今抗生物質の使用が極端に増えたことから、抗生物質に抵抗力を示す細菌が増えており、その代表的なものがMRSAと呼ばれる。

同じ黄色ブドウ球菌でも、MRSAはメチシリンという抗生物質に抵抗を示すものであるのに対し、他にもバンコマイシンに抵抗を示すVRSAというものもあり、新たな抗生物質が開発されてもやがては病原菌が抵抗力をつけるといういたちごっこが今後も続くと思われる。
日本や香港は世界的に見て抗生物質の使用量が非常に多いことがこれまでも指摘されている。MRSAやVRSAがあらわれるのは、抗生物質の使いすぎが原因であることに間違いない。

たとえば「風邪」と診断されて抗生物質を出されたことがある人は少なくないと思うが、風邪症状を起こすウイルスには抗生物質は無効だ。2次感染の予防という目的で処方されているのが現状と思われる。不要な投与にあたるが、患者もその処方を求めていることもあり、必ずしも医師だけに責任があるわけでもないだろう。この点に関しては解熱剤も同じだ。

さて、一般におけるMRSAの予防であるが、保菌者の傷口などに接するのが最も危険であるといわれるので通常では神経質になる必要はない。しかしサウナやマッサージ、エステなどを行う店では、タオルなどの処理が適切でなければ十分感染源になることが考えられる。衛生管理が不十分だと思われるこれらの店は利用しないことが懸命だ。