貝毒について

香港の街市で売られていたホタテ貝から基準を超える貝毒が検出されたため、食物安全センターはホタテ貝を食べるのを控えるよう呼び掛けているが、実はこの貝毒は特別なものではなく、北海道などのホタテ貝の産地では毎年のように認められ、すぐに出荷停止となるため養殖業者の悩みの種ともなっているものだ。

この貝毒には、麻痺性貝毒、下痢性貝毒、神経性貝毒、記憶喪失性貝毒といったものが知られているが、このうち主に問題となるのは麻痺性と下痢性だ。おそらく今回香港で問題になったのは症状からして麻痺性貝毒であろう。

貝毒は貝が自身でつくった毒ではなく、えさとなるプランクトンに含まれる毒素が貝の体内で濃縮されたものだ。この毒はどのように調理しても無毒化されることはなく、しかも毒の種類によってはフグ毒に匹敵するほど強毒であり、十分に注意する必要がある。

毒は主に中腸腺と呼ばれる内臓に含まれる。ホタテ貝でも貝柱には全く問題がないが、丸ごと食べる場合には内臓を完全に取り去ることが大切だ。市場などで貝を処理しているのを見ると、どのような貝も剥き身にする場合は完全に内臓を除いている。おそらく内臓を食べてはいけないという昔からの経験があるのだろう。その意味からするとアサリは危険性が高いといえる。

日本では50年以上も前に、浜名湖で大規模なアサリ中毒事件が起き、200人近くが死亡しているが、現在では検査体制が整っているので中毒事件が起きることはほとんどなくなった。検査は行政はもちろん、貝類出荷業者も独自に実施し、食中毒を起こす毒素量よりも十分に低い毒素量を安全基準として設けているため、極めて高い安全性が確保されている。したがって日本では購入した貝類で貝毒にあたってしまうことはほとんどなくなったが、問題は潮干狩りなど自分で採取した貝類を食べた場合だ。極めて軽い症状であることも少なくないので、実際にどのくらいの中毒が起きているのか全く把握できていない。おそらく今の時期は潮干狩りシーズンを迎えて、患者が増えているのかもしれない。(ただし漁協などが管理している潮干狩り場では、通常貝毒の検査が行われているので問題は少ない)

貝毒は二枚貝にのみ認められるもので、巻貝については問題にならない。毒を持つか持たないかを、貝を見て判断することは不可能だ。また香港や中国では日本で行われているような検査が行われているとは聞かないので、心配であれば特にプランクトンが増える暖かいシーズンには二枚貝を食べるのを控えた方が良いかもしれない。